ころぐ

狙うとスベる

渋谷で吉野晃一を見た/Takuya IDE 6th LIVE『DAY 1』の話

 

2018/03/3 

少し肌寒い曇り空の下、私は渋谷道玄坂の路上で入場待ちの列に並んでいた。道玄坂は2年前の「うたうたいVol.2」の会場、マウントレーニアホールがある。あの時私は結局会場に入れず、漏れ聞こえる楽しそうな声を背に、泣きながら帰った。そして渋谷は1/16のあの発表を知った場所でもある。一体なんの因果だろうなあと考えながら、つま先を見つめ、自分の整理番号が呼ばれるのをひたすら待った。

入場して、気づいたら下手にいた。条件反射なんだなあ。周りもそんな感じの人がちらほらいて、ペンライトを手にウキウキとした人々に紛れて、それぞれポツンと不安そうに、所在なげに開演を待っていた。

開演。流れるように進んでいくセットリスト。披露される楽曲はバリエーションに富んでいて、一人でこれを表現する井出さんはすごい。ゲストのKTRさんはクランパーとして、とても有名な方と聞いた。一瞬で場を掌握する、視線を奪う、彼の躍動的なダンスに会場は熱気を帯びた。互いが互いを高め合うステージの熱量は、見ていて気持ちよかった。

何度目かのMCのあと「引き続き楽しんで行ってね~!」という言葉と共に、井出さんがステージからはけていった。代わりにステージに一人出てきたのは、吉野晃一だった。真っ白の衣装を着た晃一くんは、スポットライトが当たったみたいに眩しかった。頬は丸みを取り戻し、全体的にメイクも薄く、そして肌荒れが生々しかった。この人も今この時を生きてるんだよなあなんて、そんな当たり前のことを考えた。

シンと静まり返った会場に、大きく息を吸う音が響く。大好きな歌声が、ずっと聞きたかった声が聞こえる。ああでも、始まったら終わっちゃう。次がいつか分からないのに今が終わっていってしまう、そんなことを考えていたら、アカペラに続いて流れるはずのトラックが流れなかった。

「ってなんで~~~~」と笑っている晃一くん。その笑い声で我に返った。「今朝こんな夢見たの。悪夢だって。これのことかな。」って、悲しいぐらい変わらない、いつもの笑い声。

結局アカペラでやることになったplayback。意気揚々と場を仕切り、盛り上げ、観客を引きつけていく。トラブルを機にいいムードを作っていく晃一くんは、とてものびのびとステージを楽しんでいた。歌われる歌詞の辛辣さとは裏腹に。聞くのは2回目のplaybackは前回よりもくっきりと歌詞が聞き取れて、大好きな声で歌われるにはあまりにも、心がついていかなかった。

どんな気持ちでこの歌詞を書いたんだろう。そして晃一くん自身は自分の発した言葉に苦しめられていないだろうか。意固地になってがんじがらめになってないだろうか。大好きな声が、知りたくない感情を歌っている。気づけばまた情けなく、グシャグシャに泣いてしまった。ここ最近現場で泣いてばかりで嫌になる。

playbackが終わり、井出さんがステージに現れた。井出さんは「横ノリのプロ」として晃一くんを呼んだと言い、そして照れくさそうに笑う晃一くん。「自分カワイイで売ってますから」とおどけたり、井出さんを振り回して甘えている話をしたり、終始和やかなMCだった。私も少し笑う余裕ができたし、何より井出さんが「お風呂事件」を皮切りに、晃一くんとの楽しい話をポンポンしてくれて、脱退の件に話題を向けなかったことが、本当にありがたかった。

二人でコラボレーションした楽曲は、「トロイ」と聞こえた。TROYかな?トラックは吉野が作ったんだよ、と井出さんが言った。かっこいでしょって。歌詞は二人で書いたんだろうか。その二人が肩を並べ、向かい合い、挑み合う。下手からは井出さんを見る晃一くんの表情がよく見えた。晃一くんがサングラスから覗かせる瞳はいたずらっぽく、挑発的で、どうしようもなくキラキラしていた。メロディーを追うのに必死で、攻撃的な歌詞はほとんど聞き取れなかったけど、「黙っていれば言いたいこと言って」というフレーズが、「トロイの木馬」を連想させた。私も散々、勝手なこと言ってるよなあとか、思ったりして。

 

ライブが終わって思ったこと。井出卓也さんはとにかくめっちゃ良い人だった。

これだけハッキリ「ダメなものはダメ」と、本人が口に出して言ってくれるのは、いいなって。客商売の手前、苦笑いでうやむやにしがちなことも、スパッと言ってくれる姿、私はすごく好きだし信用できる。

ライブ中盤に具合が悪くなった方がいた時も、ステージの上からしゃがんで目線を合わせ、「大丈夫?」と声をかけ、「みんな暑いよね?スタッフさん空調下げてもらえますか?」「あ、もう冷房?そっか…」というやり取り、心配そうにウロウロする姿は、彼の持つ「人間らしい可愛らしさ」を感じた。最後の方にMCで言っていたこの言葉も印象的だった。

井出さん、この場に晃一くんを呼んでくれて、本当にありがとう。実は私、井出さんのことよく知らなかったので、コンコンチキのコンチキショーだったらどうしようと思ってたのですが、まじでフツーに良い方だったのでめっちゃ救われました。井出さんのファンの方もあたたかく、ノリの良い方ばかりで楽しかったです。

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すごい色々考えちゃって、楽しかったのに書き出したらすごい暗くなっちゃって、なんだかわけがわからなくなってるんですけど。超特急にも、吉野晃一にも、このままではずっと置いて行かれてしまう気がして、ないものねだりはいつかやめないといけないな、と思ったライブだった。でも結局、どうしたって7人が大好きだし、コーイチくんが大好きだし、堂々巡りをしながら、過ぎゆく時間を見つめている最中です。

 

「前を向く」って言葉、正直食傷気味なんだよね。